認識の記憶化-フィードバックの活かし方-
「この人はセンスがあるなぁ」
仕事においても、その様に感じることがありませんか?
発想力や創造力、クリエイティビティは天性のモノだと思われがちですが、
脳科学的には少し違うようです。
池谷裕二・糸井重里 著 『海馬-脳は疲れない-』という書籍によると、
僕達が、同じ視覚情報が入ってくるにも拘わらず認識が異なる(差がある)のは、
認識する為のパターンの組合せ(=記憶)の違いだそうです。
つまり、創造性も記憶力から来るということができます。
同書では、新しい認識を受け入れて、脳内のネットワークを密にしていくことが、
クリエイティブな仕事に近づいていく為のヒントであると述べられています。
センスは学べるのです。
大切なのは、適切に認識するパターンを増やしていくことです。
ここで今一度考えたいのが、“フィードバック”です。
フィードバックとは、
相手の行動に対して改善点や評価を伝え軌道修正を促すこと、です。
マネジメントとして、日々実践・活用されている組織も多いと思います。
フィードバックによる成果基準のひとつが、
もう同じフィードバックをしなくてよくなること、です。
フィードバックの実施者(例えば上司)の認識を、
フィードバックの被実施者(例えば部下)が学び、記憶化することで
新たな視点・視座を獲得することです。
ここで参考にしたいのが、アメリカの海軍戦闘機戦術教育、
通称「トップガン」で実施されているプログラムです。
教官が敵パイロット役を務め、訓練生とドッグファイト(戦闘機同士の空中戦闘)を行います。
あくまでも演習のプログラムなので、ミサイルや銃弾は使用しないのですが、
代わりにカメラを搭載し、敵機と遭遇する場面などが全て録画され、レーダーで追跡、記録します。
教官は海軍でも最高のパイロット達なので、訓練生はボコボコにやられます。。。
着目すべきは、その後の振返り(フィードバック)です。
以下、アンダース・エリクソン著 『超一流になるのは才能か努力か?』から引用抜粋・加筆修正
本当の戦いは、パイロットが空から降りて来た後、
海軍のいう「事後レポート」と呼ばれるセッションで行われる。
このセッションでは、教官が訓練生を容赦なく詰問する。
飛んでいるときに何に気づいたか。
その時、どんな行動をとったか。
なぜその行動を選択したのか。
どこで誤ったのか。
他にどんな選択肢があったのか。
必要があれば、
教官は戦闘機同士が遭遇したときのフィルムやレーダー部隊が記録したデータを取出し、
ドッグファイトの最中に具体的に何が起きたか指摘する。
そして詰問の途中あるいは終了後に、
どこを変えればよいか、何に目を光らせるべきか、
様々な状況でどんなことを考えるべきか、といったアドバイスを与える。
そして翌日、教官と訓練生は再び飛び立ち、また訓練を繰返す。
すると次第に訓練生はそうした問いを自らに投げかけるようになる。
その方が教官から言われるよりずっとましだからで、
毎日毎日のセッションで言われたことを頭に叩き込んで離陸する。
徐々に教えられたことが身に付き、あれこれ悩まず、自然に状況に反応できるようになり、
教官との戦績も次第に改善していく。
訓練期間が終了すると、
他のパイロットとは比較にならない程の経験を積んだ訓練生は所属部隊に戻り、
飛行隊の訓練担当官として学んできたことを周囲のパイロットに教える。
この訓練は劇的な効果をもたらした。
・・・なるほど。
こうやって、マーヴェリック(トム・クルーズ)も一流になったんですね。
重要なのは、フィードバックにより、
新たな認識(この場合は教官レベルの視点)を得ることです。
それができれば、自分の活動を再認識(捉え直す)することができ、
セルフフィードバックが可能になります。
このスパイラルの構築が、成長のカギといえるのではないでしょうか。
▼参考図:フィードバック強化スパイラル
フィードバックを単に指摘して終わりにせず、
“認識を記憶化する(させる)”というアプローチで是非お取組みください。
追記)
フィードバックの対となる概念が、フィードフォワードです。
実はこれもめちゃめちゃ大事です(=使えます)。
OODAループという意思決定理論内で説明していますので、こちらもご参考下さい。
※タイトルか画像をクリック
因みに、OODAループも戦闘機操縦士が発明した理論です。
命がけの仕事から導き出されたエッセンスの恩恵を、遠慮なく受けましょう。