心健やかな顧客への問題提起-営業の付加価値-
“芸術というものは、心病む者には救いになり、心健やかな者には問題提起になる”
※出典『ダンス・ダンス・ダンス―ル』16巻 第136幕 より
ダンス・ダンス・ダンス―ルという漫画(とても面白いです)に出てくる、
岩井先生の言葉です。
僕は芸術とは何かを語れる知見はありませんが、
この言葉は、営業という仕事にも非常に当てはまります。
顧客の問題解決が営業の仕事ですが、
心健やかな者(顧客)とは、問題が発生してない状態です。
その様な顧客に対し、
問題を設定する(=問題提起)ことが、営業の付加価値です。
問題の“発生”と“設定”について、具体的に考えてみます。
▼問題とは、あるべき姿と現状のギャップ
一般的に「問題」とは、
“あるべき姿(目標)”と“現状”のギャップ(差)であると定義されます。
あるべき姿を「To be」現状を「As is」と表現されることもあります。
意味としては同じだと思って下さい。
どちらかが欠けていては、
そこに問題を認識することはできないということです。
あるべき姿と現状、この2要素が必ず必要となります。
現状は常にそこに存在しているので、
「問題」とは、あるべき姿をどのように捉えるのか?で変わります。
そして、“発生型”と“設定型”の大きく2種類に分けられると思って下さい。
▼発生型の問題とは
あるべき姿と現状が把握できており、既に問題が「発生」している状態です。
“心病む者”の状態です。
顧客自身が問題を認識しており、解決の必要性が高い場合は、
解決策を探し、検討しているフェーズだと思って下さい。
あるオフィス環境を例に考えてみます。
デスクの上が非常に散らかっており、仕事にならない状態です。
これが現状だとすると、あるべき姿はどうなるでしょうか?
デスクが整理整頓され、仕事がしやすい状態が、あるべき姿といえます。
つまりこの2つの状況のギャップが問題です。
解決すべき問題とは、
この散らかっている状態をいかに綺麗にするか?となります。
掃除道具や収納スペース、断捨離ノウハウの提供などを「提案」すると良さそうです。
▼設定型の問題とは
あるべき姿が存在せず、問題を認識していない状態がスタートです。
“心健やかな者”の状態です。
心健やかな者に必要なのは、“問題提起”です。
営業から、あるべき姿を「設定」することで、
意図的にギャップを創出するイメージです。
先のあるオフィス環境の例です。
既に、デスクの上が綺麗に整理整頓されている場合です。
通常この状態のままでは、特に問題を感じません。
そこに、あるべき姿を設定してみます。
例えば「WEBでの会議・商談に対応できる環境が必要ではないでしょうか」と、
テレワークや非訪問の営業活動の生産性を向上させることを、
あるべき姿として設定することができたとします(一例です)。
そうすると、そこに改善余地(ギャップ=問題)が生まれます。
ネット環境の強化やディスプレイの追加、
WEBミーティングに関するノウハウ提供等が「提案」になるかもしれません。
▼発生型と設定型の対比
それぞれを纏めると以下の様なイメージです。
顧客の問題を解決することが営業の仕事(=提案)ですが、
「困ってないから」「間に合っているから」と言われてしまうと、
提案の余地がなさそうです。
しかし、あるべき姿を提示することで、問題は設定できるのです。
「もっとこうした方がいいのでは」「こういうやり方もある」という、
問題提起こそ営業の付加価値です。
解決すべき問題という「需要」は営業が創れるのです。
営業に求められるスキルは、あるべき姿を提示する問題提起力です。
必ずしも正解が無いことから、
アート思考など従来のロジカルな発想を越えることが求められています。
この辺りの思考法については、また機会を作って纏めてみますが、
芸術家も才能だけではなく、努力していることは間違いないようです。
出典『ブル―ピリオド』1巻一筆目 絵を描く悦びに目覚めてみた より
追記)
あるべき姿を提示する為に欠かせない要素があります。
それは、知識です。
そして、重要なのはその“幅”です。
詳細は、下記からご確認下さい。