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判断のあるところにノイズはあるらしく

 

金太郎飴とは、どこを切っても切り口に金太郎の顔が現れる棒状の飴です。

 

 

飴細工の一種で、正式には「組み飴」というそうです。

 

 

どこを切っても同じ絵が現れることから、

 

転じて“違いがなく画一的であること”の喩えとして使われることがあります。

 

 

あまりポジティブなニュアンスでは使われない喩えですが、

 

プロフェッショナルの判断及び意思決定においては、

 

ある種“金太郎飴的”であることが求められるケースがあります。

 

 

 

病気の診断、裁判の判決、営業における提案内容のクオリティ、等です。

 

 

少なくとも一定の水準と、許容できる範囲内の誤差が期待されます。

 

 

 

プロフェッショナルが下す評価(判断・意思決定)はほぼ同じ」だと

 

信じ込むこの傾向を、“一致の錯覚”と呼びます。

 

 

 

・・・錯覚?

 

 

 

・・・そうです。

 

 

 

残念ながら、錯覚なのです。

 

 

ダニエル・カールマン他著『NOISE(上下)』という書籍で挙げられる例です。

 


 

採用試験で、採用評価がAさん>Bさんであったとしても、

 

数年後の評価がAさん>Bさんになる確率は59%にすぎない。

 


 

ある保険会社で2人の専門職に個別に見積を依頼し、

 

2人の金額の差がどれくらいあるかを調査したところ、55%もの開きがあった。

 


 

前科のない2人が偽造小切手を現金化したため有罪になった。

 

搾取した金額は、1人は58.40ドル、もう1人は35.20ドル。

 

ところが量刑は前者が懲役15年、後者が30日だった。

 


 

難民認定の許可は審査官によって異なることが多く、

 

ある審査官は申請の5%しか許可しないが、

 

別の審査官は88%許可をするという例があった。

 


 

2人の精神科医が州立病院の患者を別々に診断したところ、

 

患者の精神疾患の病名の一致度は50%にすぎなかった。

 


 

 

 

どうでしょうか。。。

 

 

正直、許容できる範囲内の誤差は、バリバリに超えています。

 

 

 

その道に精通し、恐らくは充実した教育体制や資格といったフィルターを通過した、

 

賢いであろう人達がこれほどまでに判断を誤るのは疑問です。

 

 

 

その原因のひとつが、“ノイズ”です。

 

 

『はじめの一歩』86巻「Round819:苦戦どころか」より

 

 

 

以下、ダニエル・カールマン他著『NOISE(上下)』より抜粋

 


 

ある事柄の判断におけるエラー(誤差)の大半が同じ方向に偏っている場合には、バイアスが存在する。

 

バイアスとは、平均誤差のことである。

 

たとえば、射撃チーム全員が順に射撃をしたところ、着弾点がほぼ全部標的の左下に偏っていたとか、

 

経営陣が毎年いつもひどく楽観的な販売予想を立てるとか、

 

会社が本来なら清算すべき失敗プロジェクトにだらだらと予算を注ぎ込み続けるといったケースでは、

 

バイアスが疑われる。

 

バイアスを取り除いても、エラーは必ずしもなくならない。

 

バイアスを排除した後に残るエラーがあることはあまり知られていない。

 

残ったエラーは、判断の望ましくないばらつきである。

 

つまり、現実に当てはめたものさしが信頼できないということだ。

 

これがノイズである。

 


※このノイズが発生する細かい原因や、処方箋(対策)の詳細は書籍を参照下さい

 

 

 

一定以上の営業スキルを備えている営業組織でも、

 

提案内容や顧客対応にバラつきが生じるということです。

 

 

それが個性や特色と言えるような好ましいバラつきであれば良いですが、

 

顧客に不利益をもたらすようなバラつきの場合、早急に改善が必要です。

 

 

 

ついでに、もうひとつ残念なお知らせです。

 

 

 

それは、僕達“個人が常に同じ判断を下すこと”も同様に難しいらしいのです。

 

 


 

同じケースで二回所見を求められた医師が、一回目とちがう診断を下すことがある

 


 

指紋分析官が同じ指紋を数週間後に見せられて、ちがう結論を下すこともある

 


 

経験豊富なソフトウェアコンサルタントは、

 

同じ開発作業の納期の見積で、二回目は一回目と大幅にちがう数字を出した

 


 

 

 

如何でしょうか。。。

 

 

 

プロフェッショナルといえど、

 

「常にベストな判断はできない」というのは、

 

「複数人の判断にはそれぞれバラつきが生じる」という主張以上に、

 

正直、受入れ難い(=認めたくない)指摘です。

 

 

 

顧客への提案・対応に常にベストで応えてるつもりでも、

 

その時々によって同一のパフォーマンスにはならない、ということです。

 

 

 

夜中に書いたラブレターを翌朝見直したら、

 

恥ずかしすぎることを書いていた、みたいなことでしょうか。

 

(因みに僕はその経験はありません。本当に。)

 

 

 

最適な判断を実施する為には、ノイズの存在を認めることです。

 

 

プロとしての矜持を持ちつつも、

 

 

・同じ専門家同士でも、異なる判断をする可能性がある

 

・ベストを尽くしても、常に同じ判断ができるわけではない

 

 

ということを理解し、時に立ち止まり、見直し、

 

他者の意見を取り入れて修正しなければなりません。

 

 

 

自分の当初の仮説に反するような情報や反対意見を積極的に探し

 

慎重に天秤にかけるという

 

 

“積極的に開かれた思考態度”が求められています。

 

 

 

「判断のあるところにノイズあり」らしいです。

 

 

皆さん、ノイズに注意です。

 

 

 

追記)

 

とはいいつつも、ついつい自分は大丈夫・・・

 

と思ってしまう認知バイアスが“正常性バイアス”です。

 

 

自分にとって都合の悪い情報を無視したり、

 

過小評価したりするという認知の特性のことです。

 

 

「なるほど、正常性バイアスか・・・、でも自分は・・・」

 

 

という無限ループに陥らないように注意したいモノです。

 

 

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