親しみ易さと権威性のバランス
“お気軽にご相談下さい”
皆さんも普段、何気なく使っているフレーズだと思いますが、
営業において非常に理想的な顧客との関係性を表しています。
皆さんは、自社で取り扱っている商品・製品・サービス及び、
事業領域においてのプロフェッショナルです。
顧客から「〇〇を下さい」というオファーは、
それはそれで有難いのですが、
「こんなことを考えているんだけど・・・」という相談に対して、
的確な提案をすることが営業の重要な仕事のひとつです。
つまり、相談して欲しいのです。
そして、先のフレーズの“お気軽に”は、決して社交辞令ではありません。
本当に気軽に(=ビジネスになるかわからないことでも)、
相談して頂きたいのです。
何故なら、課題が明確でない段階から相談を頂ければ、
課題化・具体化を進めていくプロセスを顧客と共有することができ、
結果的に付加価値の高い提案に繋がる可能性が高いからです。
そう考えると、気軽に相談頂けるような“親しみ易さ”はやはり必要です。
しかし、ビジネスである以上、顧客は解決を期待して相談します。
この“期待してもらう”為には、何が必要でしょうか?
参考になる実験を2つ紹介します。
▼能力への信頼は人間の本能
橘玲著『無理ゲー社会』より、抜粋・一部加筆修正
![](https://emp-consul.com/wp-content/uploads/22304751_l-300x200.jpg)
アメリカの保育園で行われたとても興味深い実験がある。
子供達は、いつも世話をしてくれる(よく知っている)保育士と、
はじめての(見知らぬ)保育士の映像を見せられた。
どちらの保育士が好きか訊ねると、
当然のことながら、子供達はよく知っている保育士が好きだと答えた。
次に保育士が、珍しいモノに名前のラベルをテストに挑み、
正解か不正解かが示された。
この時、見知らぬ保育士は常に正しいラベルを貼り、
良く知っている保育士は全て間違えた。
その後子供達は、知らないモノを見せられ、
どちらの保育士にその名前を教えてもらいたいかを訊かれた。
3歳の子供は、テストの様子を見ても、やはりよく知っている保育士を好んだ。
ところが4歳児は、よく知っている保育士に答えを訊くのをすぐにやめて、
見知らぬ保育士を頼るようになった。
同じことは、中高生を対象にした研究でも示されている。
生徒達に教師の能力(ミスの直し方を示せたか、正しい情報を与えたか、
クラスを手際よく導き監督できたか)を質問すると、
その回答から学習の習得度を明確に予測できた。
その教師が好きか嫌いかは習得度とは関係がなかった。
学習にとって重要なのは、子供が教師の能力を信頼していることだ。
たとえその教師が嫌われていても、
生徒から有能だと認められていれば、そのクラスは習熟度が最も高かった。
私達は、相手にどの程度の利用価値があるかを(無意識に)見積もっている。
有能な者に魅力を感じ、
無能な者を避けるよう進化の過程で「設計」されている。
すなわち、メリトクラシーは人間の本能なのだ。
ビジネスシーンにおいて、利益を上げるという目的がある以上、
いくら親しみ易くても有能でなければダメなのです。
正確には、“有能だと認識されていないと”ダメなのです。
皆さん(自社・営業)の有能性が伝わっているでしょうか?
ドラゴンボールのスカウターのように、
相手(顧客)に力量をひとめで分かってもらえればいいのですが、
なかなかそうはいきません。
![](https://emp-consul.com/wp-content/uploads/68473dbcabb14c196edabaa4d34fe616.png)
ドラゴンボール17巻 其之二百三「孫悟空 最後の手段!!」より
そこで、活用したいのが“権威性”です。
▼権威性という情報の開示
ロバート・チャルディー二著『人を動かす「説得」の心理学※』より抜粋
※Harvard Business Review Oct.2001
![](https://emp-consul.com/wp-content/uploads/1475_l-300x200.jpg)
理学療法士が、心臓発作で入院していた患者が退院と同時に
リハビリをやめてしまうケースがあまりにも多いと嘆いていた。
自宅で定期的にリハビリをすることの必要性を何度説いても、
馬耳東風なのだという。
そこで一部の患者にインタビューを試みたところ、理由が判明した。
患者は医師の経歴や研修受講歴は知っているが、
理学療法士については、
どういった資格を持っているのかをほとんど知らなかったのである。
この情報不足を解消することは難しいことではなかった。
理学療法の責任者に依頼して、療法室の壁にスタッフの受けた賞状、
卒業証明書、資格証明書などを貼り出すようにしたのである。
その結果、リハビリの実施率が実に34%もアップし、
以後その水準で保たれている。
皆さんの事業領域の専門性が、きちんと伝わっているでしょうか。
目的は権威を示すことではありませんが、手段のひとつとして、
専門性・ノウハウを有した、相談に値する相手だと、
期待してもらえるような情報の開示と提供は、意識的に行わなければなりません。
期待してもらうに為に、権威性をうまく利用しましょう。
縦軸に“権威性”、横軸に“親しみ易さ”をとったマトリクスが下記です。
![](https://emp-consul.com/wp-content/uploads/b4d4d3de640c1e4bcb80f03fcfa12169-300x172.jpg)
目指すべきは、右上です。
「相談してみよう!」とアクションして頂くには、
気軽に相談できる親しみ易さと、
解決を期待させる権威性、このバランスが必要です
そして営業パーソン自身にも、
この様なポジショニングがとれるようなセルフプロデュース、
ブランディングが求められていると思います。
その為にはどうすればいいか、ですか?
・・・
是非、お気軽にご相談下さい!
追記)
ポジショニングを確立する為には、まずは情報の開示です。
アンカリングという考え方が非常に使えるので、下記をご参考下さい。
![](https://emp-consul.com/wp-content/uploads/5030161_l-300x200.jpg)