アンカリングー提案営業におけるプロセス強化のカギー
皆さんの営業プロセスにおいて、最も重要なプロセスはどこでしょうか。
提案(が求められる)型の営業スタイルの場合、
「ヒアリング」が最重要だと回答頂くケースが多いのではないかと思います。
ニーズが明確で、比較購買しやすい商品・製品・サービスの場合は、
クロージングで背中が押せるかが勝負みたいなところがあります。
しかし、潜在的なニーズを顕在化し、価値ある提案をしようと思えば
顧客やその検討背景を知らなければなりません。
なので「ヒアリング」が重要、という回答には、僕も激しく同意です。
では、ヒアリングのプロセスを強化する為に、どの様なことをされていますか?
ヒアリング項目の標準化・具体化、
質問方法・話法のトレーニングが一般的ではないでしょうか。
非常に重要な取組です。
ただ、重要なことが忘れられがちです。
そのヒアリングを実施するのは、“結局誰なのか“という問題です。
顧客が、困っていることや発生している問題、戦略・計画、
やりたいこと・できていないことなど、
場合によっては言いたくないこともあるかもしれません。
それらを提示する(話してくれる)ということは、
そうすることでのメリット(=良い提案になる)を期待するからです。
つまり、ヒアリングというプロセスを強化しようと思えば、
“この人(企業)は、情報を開示するに値する“
という判断をしてもらわなければいけません。
いくらヒアリングの項目を精査し、話法をトレーニングしたとしても、
態々話す価値がないと顧客に評価されてしまっていたら、残念ながら“聞けない“のです。
そこで、取組んで頂きたいのが「アンカリング」です。
アンカリングとは、アンカー(碇)を落とすという比喩です。
認知バイアスの一種で、先行する何らかの情報(アンカー)によって、
後の情報の判断が歪められ、判断された結果がアンカーに近づく傾向のことを指します。
『賢い人がなぜ決断を誤るのか?』という書籍に出てくる例が面白いので、引用します。
被験者を2つのグループに分けてある実験をします。
マハトマ・ガンジーの亡くなった年齢について質問した。
一方には、ガンジーが亡くなった年齢は140歳より上か下かを尋ねる。
もう一方には、それが9歳より上か下かを聞いた。
当然、誰も苦労せずにこの質問に答えた。
しかし、この質問に続いて、ガンジーの没年を推測するように指示された時、
この明らかにナンセンスな“アンカー“が違いを生んだ。
140歳にアンカリングされたグループが推定した没年齢は平均で67歳だったが、
9歳にアンカリングされたグループが推定した没年は平均で50歳だった。
※正解は、ガンジーは78歳で亡くなった
という話です。
事前の情報・値というアンカーに、判断が引っ張られているのです。
因みに、子供の頃にやった(やられた)ことがある方もいると思いますが、
「ピザ」と10回言わされた後に、肘を指差して「ここは?」と問われた際に
「ひざ」と答えてしまう現象も、アンカリングの一種らしいです。
要は、ヒアリングという重要プロセスを実施する前の段階で、
この人(企業)は情報を開示するに値する、という判断を促す
アンカリングをしておきたいということです。
ヒアリング実施時のパフォーマンス以上に、それができる環境・状況の下準備が大切なのです。
その為の方法論を3点、纏めています。
それぞれを詳しく解説している記事もありますので、リンクを参照にして下さい。
(1)顧客の頭の中でのポジショニング
顧客が態々情報を開示し、提案をうけるということは、何かしらの専門家であるはずです。
しかしながら、世の中で唯一の専門家でない場合は、
他社(者)との違いを明確にする必要があります。
仮に、世の中で唯一の専門家であったとしても、それをメッセージ化する必要はあります。
顧客の頭の中で、どのようにポジショニングするか?
詳細、下記を参考にして下さい。(画像をクリック)
▼顧客に選ばれる為の営業差別化戦略
(2)情報提供→情報取集(ヒアリング)の順序
●●分野の専門家で、■■というノウハウが特徴だ!というメッセージを作ったとしたら、
それをお伝えしなければなりません。
情報提供が先なのです。
情報提供のパターンとして、
プロモーション・コミュニケーション・エデュケーション に大別できます。
それらを戦略的に組み合わせることが重要です。
詳細、下記を参考にして下さい。(画像をクリック)
▼アリジゴクに思う、戦略におけるコントローラブルな変数の重要性
(3)営業のプロフェッショナル化
アンカリングする際の“アンカー(情報)“を重くする、ということです。
この人(企業)になら・・・・
この人(企業)だから・・・・
と判断してもらう為には、営業パーソン個々の地力を上げていかなければいけません。
一朝一夕では難しいですが、成長する為のマインドセットを僕なりに纏めています。
詳細、下記を参考にして下さい。(画像をクリック)
▼成長する営業パーソンのマインドセット
アンカリング、是非意識してみて下さい。
一般的には、数値をアンカーにして、
金額交渉のテクニックとして、紹介されることが多いノウハウだったりするのですが、
本質は違います。
重要なプロセス(今回だとヒアリング)を最適に実施しようと思えれば、
それが実施しやすい状況を準備すること(アンカリング)が重要だ、ということです。
追記)
アンカリングの例に出したガンジーが残した、僕が好きな名言です。
「明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい。」
営業シーンにおいても、
今回しかない!と思って入念に準備し、全力を尽くし、
お付合いは永遠!と思ってカスタマーサクセスに取組みたいものです。
流石ガンジー、良いこと言います。