記憶が曖昧であることの利点
モズの速贄(はやにえ)をご存じでしょうか。
モズ(百舌鳥)は、全長20cm程の肉食性の小鳥です。
可愛らしい見た目からは想像できない、一風変わった習性を持っています。
モズは、捕まえた獲物(バッタやカエルなど)を
木々の枝先や有刺鉄線のトゲなどに突き刺して、長期間そのまま放置(保存)するのです。
この習性が「モズの速贄(はやにえ)」と呼ばれています。
因みに、なぜそのようなことをするのか?は諸説あるそうです。
また、イギリスではモズを「と殺人の鳥」、
ドイツでは「絞め殺す天使」と呼ぶそうです。。。怖っ!
このモズの速贄(はやにえ)ですが、
しばしば獲物が放置され、忘れ去られるという現象が起きます。
こうしたことから、モズは古来より、
自分がとってきたエサを忘れてしまう位に記憶力が悪い、とされてきました。
しかし、脳科学的にはどうやら違うようです。
池谷裕二 著 『パパは脳科学者』に記載の内容から、抜粋・引用(一部修正)です。
※因みにこの本、めっちゃ面白いです。お薦めです。
トリ頭とは、物事をすぐに忘れてしまうことの比喩として使われます。
脳の観点から言えば、実はそんな事実はなく、トリの記憶力はびっくりするほど正確です。
例えば、ヒトにほんの少し歪んだ正三角形を眺めてもらい、
1ヵ月後に「あのとき見た図形」を思い出して描いてもらうと、
歪みのないきれいな正三角形を描きます。
多少の歪みの誤差は、ヒトにとってはどうでもいいレベルで気にも留めないのです。
しかし、トリは、その微妙な差異を厳密に区別します。
差があれば、別物として扱います。
トリは、写真を撮ったかのように風景を正確に覚えます。
実は記憶が正確だからこそ、モズの速贄(はやにえ)は忘れられてしまうのです。
今、獲物を刺した枝とその周囲の風景を写真を撮るように、
「パシャッ」と正確に覚えたとします。
でも、枯れ葉や枯れ枝は風が吹けば飛んでいってしまいます。
すると、それだけでは写真の記憶とは照合できません。
つまり、このエサは自分が刺した獲物ではない、と判断してしまうのです。
記憶は、正確すぎると実用性が低下します。
いい加減で曖昧な記憶の方が役に立つのです。
時折「子供は何でもすぐに覚えられて羨ましい」という方がおられますが、
これは間違った考えです。
残念ながら脳が未熟なために、正確な記憶しかできないだけのことなのです。
子供は「正確な記憶」が得意。
だから、まだ十分に有用性を発揮しきれない。
それが成長によって、大人らしい「曖昧な記憶」に成熟していくわけです。
トリを馬鹿にしてきたつもりはありませんが、一応、謝っておきましょう・・・
つまり、曖昧な記憶は、ヒトの進化と成長の証しなのです。
また、記憶が曖昧であることの利点が2つあると言われています。
ひとつは、想像力の醸成です。
記憶が正確過ぎると、事象の隅々までをよく思い出せるため、
覚えていない部分を想像で埋める必要性が発生しません。
よくわからない(覚えていない)部分を、
想像・空想で補填する、という脳の働きが想像力を育てるそうです。
記憶の曖昧さは、想像力の源泉と言えるのかもしれません。
もうひとつが、機会の獲得です。
記憶が正確過ぎると、一度失敗したことに対して、正確な記憶が防波堤となり、
再度チャレンジすることができにくくなります。
成長において機会の獲得は欠かせませんが、最初から上手くいくわけでもありません。
同じ過ちを繰り返す原因でもありますが、
記憶が曖昧だからこそ、再チャレンジに臨むことができます。
記憶の曖昧さは、機会獲得における大事な要素です。
曖昧な記憶は、悪いモノではなさそうですね。
では、正確な記憶・記録が不要か、というとそうではありません。
ここでSFA・CRMの出番です。
記憶の範囲を越えた情報管理には、テクノロジーを活用しましょう。
この辺りは僕の専門領域ですので、是非お気軽にご相談下さい。
道具(テクノロジー)による能力拡張については、
下記の様な考えも参考にして下さい。(タイトルか画像をクリック)
追記)
「なるほど、最近モノ忘れがひどいけど、これは成長なんだ!」と思ったあなた。
残念ながら、恐らくは、老化です。
すみません!言い過ぎました。
失礼しました。
・・・・忘れて下さいww