手の内を明かしあおう
ある有名な心理学の実験なのですが、アッシュの同調実験をご存知でしょうか。
1956年にアメリカの社会心理学者、ソロモン・アッシュが発表した
集団行動・同調圧力についての実験です。
以下、実験の概要をWikipediaから引用・加筆修正
8人のグループをつくり、うち7人は事前に仕込まれたサクラで、1人だけが実際の被験者です。
この被験者は、特に他の7人(サクラ)とは面識がありません。
このグループに、下図の2枚のカードが提示されます。
右側カードの3つの直線(A・B・C)のうち、左側カードの直線と同じ長さはどれか?を問います。
1人ずつ口頭で回答していくのですが、回答はサクラ役の6人が先で、
被験者はいつも最後から2番目に回答するようにされます。
そしてサクラ役の回答者は、最初の数回は正しく回答するのですが、
途中からはあらかじめ決められた間違った回答をしていきます。
実験では、こうしたサクラ役の間違った回答(多数派の回答)が、
被験者の回答にどんな影響を与えるか?が調べられました。
・・・さて、どうなるでしょうか?
実験は18回繰り返され、その結果、
全回答の37%で被験者がサクラ役の間違った回答に同調することがわかりました。
被験者ごとの分析では、被験者の約3/4が少なくとも1回の同調行動をし、
全く同調しない被験者は約1/4だったそうです。
・・・どうでしょうか?
なかなかの誤答具合です。。。
本来なら間違えようのない確信を持てる選択でも、周りの同調圧力に負けたり、
他の人が言うなら・・・と、自分の意見に自信をなくしてしまうようです。
周りに合わせることが必ずしも悪なわけではないですが、対策はあるようです。
書籍『行動科学が教える目標達成のルール』(オウェイン・サービス、ローリー・ギャラガー著)によると、
モートン・ドイチとハロルド・ジラードという社会心理学者が同様の実験をしました。
その際、被験者に”答えを自分の頭のなかだけに留めておくのではなく、
それを紙に書いてから他者に示すように”という指示を加えてみたそうです。
そうすると、なんと今度は間違いが3/4以上も減少したそうです。。。
これは、紙に書くことで自分の答えにコミットメントが強化され、
集団圧力に影響されにくくなった、ということを示しています。
どうやら、自分の意思決定を確実に実行に移す為には、
コミットメントを書き出す、というアクションはかなり有用だと思われます。
また、同書では下記のように指摘しています。
以下、書籍『行動科学が教える目標達成のルール』(オウェイン・サービス、ローリー・ギャラガー著)より抜粋
書き出すことでコミットメント達成の可能性が高まるのであれば、
それをまわりに宣言すればその可能性はより一層高まる。
つまり、書き出したコミットメントは自分のなかだけに秘めておくべきではないのだ。
実際、先の実験において、書き出したコミットメントが効果を発揮したのは、
それが公表される可能性が極めて高かったからだ。
コミットメントを書き出すのは、
自分がとるべき行動に関する社会的圧力を内面化するプロセスであるのに対し、
コミットメントを公にするのは、この内的な圧力を他者に見せるプロセスである。
重要なのは、他者から見て自分の行動に一貫性があるかということだ。
・・・なるほど。
まずは、決めたことを書き出す。
それが自分自身との約束になる。
そして、それを公に公表する。
それが他者との約束になり、
行動の一貫性が強化される、ということのようです。
この好循環を活用する為の仕組みが、日報(商談)の次回予定、です。
今日の商談・面談を経て、次にどうするのか?を書き出しましょう。
それが社内で共有されるので、
よりコミットメントが強化される(=実現されるアクションになる)ということです。
次にどうするか?
この顧客をどう攻略するのか?
どんな作戦でいくのか?
手の内を明かしていきましょう。
明かされた手の内(作戦)は、その実行力が組織内で高まるはずです。
次のアクションをコミットすることは、仕事を進める上で非常に重要です。
その観点から下記もご参考下さい(タイトルか画像をクリック)
追記)
手の内を明かす(見せる)の語源は、弓道からきているそうです。
弓を持つ左手の使い方や手のひらにできたマメを見ると、
その人の流儀や技量を推し量ることができるということから、
自分の手のひらを見せる=手の内を明かす、という表現が生まれたそうです。。。
へぇ〜!です。
となると、
”恥ずかしくない手のひら”でいるよう、鍛錬が必要そうです・・・