リカオンのくしゃみとトランザクティブ・メモリー
No1ハンターと名高いリカオン(※)
※なぜNo1なのかは、こちら(リカオン理論)を参照下さい(又は画像クリック)
群れで狩りをし、その組織力(高度な社会性とコミュニケーション)が高いことが
特徴なのですが、狩りをする際の意思決定方法が面白いのです。
狩りに行く前に、十数頭が集まって「ラリー」という集会を開くのですが、
そこで本当に狩りに行くかどうかを“くしゃみ”で多数決をとるそうですwww
くしゃみって自由自在に出せるものなのか?という疑問は一旦置いておきます。
そして単純な多数決ではなく、
個々の強さ(狩りの上手さ)によって、1票の重さが違うそうです。
1票ならぬ、1くしゃみの格差をもった多数決です。
因みに、票数が達しない場合は、狩りに行かず皆でお昼寝するそうです。
この1票(くしゃみ)の価値が異なる点が非常に興味深いです。
1票に格差があって、それを群れ(組織内)で共有できているということは、
各個体の能力・力量を知っているということです。
狩りの上手いこいつが言うなら・・・という感じでしょうか。
組織として高いパフォーマンスを発揮する為には、
この仲間の能力・知識・スキルを“知っている”ということが非常に重要だと言われています。
たとえ、その能力・知識・スキルが自分自身には備わっていなくても、です。
トランザクティブ・メモリー・システムという理論をご存じでしょうか。
▼トランザクティブ・メモリーとは
以下、入山章栄著『世界標準の経営理論』より抜粋、一部加筆修正
1980年代から90年代にハーバード大学の社会心理学者ダニエル・ウェグナーによって
確立されたトランザクティブ・メモリー・システム(TMS)は、
現代の組織学習研究で非常に重要な位置を占める。
トランザクティブ・メモリー・システムとは、「組織内の知の分布」についてのメタ知である。
すなわち「組織メンバーが『他のメンバーの誰が何を知っているのか』を知っていること」だ。
英語で言えば、[what]を知っていることではなく[who knows what]を知っていることである。
トランザクティブ・メモリー・システムは、組織内の情報共有を考える上で、決定的に重要だ。
「情報の共有化」というと、我々は
「組織のメンバー全員が同じこと(what)を知っていること」と考えがちだ。
しかし人は認知に限界があり、一人が持てる知のキャパシティには限りがある。
したがって、組織が大きくなって蓄積すべき知の総量が多くなれば、
全員がそれをすべて共有することは、そもそも不可能だ。
しかし、「彼は〇〇の専門家だ」「〇〇がわからなければ、彼女に聞けばいい」程度の
[who knows what]を覚えるだけなら、認知の負担ははるかに軽い。
組織に重要なのは、
「あの部署の〇〇さんならこのことを知っているから、必要になったらそこで話を聞けばいい」
というメタ知が浸透し、そして必要に応じて適切な他メンバーから、
聞く(知を引き出す)ことなのだ。
SFA/CRMの導入効果の一つが、情報の共有化です。
顧客情報や対応履歴的なモノは、一定の基準でシステムに蓄積されていくと考えると、
そこから“知を引き出す”ことも含めて、共有は難しくありません。
しかし、営業ノウハウやナレッジとなると、当然、形式知化されたモノだけではありません。
「この人に聞けばよさそうだ」という、
トランザクティブ・メモリーが営業の組織力強化においても重要なのです。
では、どうやってトランザクティブ・メモリーを強化すればいいのでしょうか。
方法として、インフォーマルな交流を促すことや、
フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの重要性が説かれることが多いです。
また、ある限られた特定の人に[who knows what]を集約させてしまい、
「いざわからないことがあったら、あの人に“誰が何を知っているか”を聞けばいいよ」
という体制を作る手法も一定の効果が検証されているそうです。
ただ僕が思うに、まず最初に必要なことは、
「自分はこれを知っている!」という情報発信を社内で積極的に実施することです。
組織内で記憶される(してもらう)為には、
まず記憶されるように目立つことがどう考えても近道です。
SFA/CRM(に関わらず情報共有ツール)には、
自身がインプットする情報にフラグを立てる(目立たせる)機能が付いているので、
その様なアクションから初めてみても良いかも知れません。
「こんな情報を入手しました」
「こうやったら上手くいきました」
「こんな失敗をしたので気を付けて下さい」
という情報発信が、その人を“知っている人”に変えていくのです。
積極的な情報発信や、アピールすることに奥手な人も多いかもしれませんが、
それでは組織の為になりません。
トランザクティブ・メモリーを強化していく為にも、
知っているということを知ってもらうアクションを実施していきましょう。
追記)
「自分はこれを知っている!」という情報発信をするもう一つ前の段階は、
「自分は〇〇を知っているようになると決める」です。
そして、何かしらアウトプットする機会を意図的に設定することがカギです。
詳しくは、下記よりご確認下さい
▼営業パーソンが成長できる環境の創り方(又は画像をクリック)
※特にStep:2 社内(組織内で教える側になる)の箇所が該当します