無人の山中で倒れる木と環世界の広げ方
無人の山中で木が倒れたとき、音はするか?
という問いをご存じでしょうか。
僕は、P・F・ドラッカーの書籍『プロフェッショナルの条件』で、確か最初に知りました。
元々は、ジョージ・バークリーというイギリス・アイルランドの哲学者・聖職者の言葉だそうです。
因みに、先の問いへの答えは、「音はしない」です。
音は誰かに知覚されて初めて音になるので、
誰かが音を耳にしない限り、音としては存在していない、という考え方です。
存在するとは知覚されることである、という部分がキモです。
ただ、無人の山中ならまだしも、
すぐ隣で大木が倒れているのに、微動だにしない部下、同僚、上司がいませんか?
なぜこれに気が付けないんだ!?と。
それは、知覚するかどうかは、個体差・個人差があるからです。
あの人は住む世界が違うなぁ、という皮肉もあながち冗談ではありません。
環世界(かんせかい)という概念があります。
ユクスキュルという、ドイツの生物学者が提唱しました。
ざっくり言うと、
それぞれの動物が知覚し作用する世界の総体が、その動物にとっての環境である
という考えです。
自分にとって「意味がある」と知覚されない限り、
その生物の環世界には存在していないのと同じなのです。
自分としては客観的だと信じている世界も、
実は主観的に切り取られた一部でしかない、ということでしょうか。
思うようにコミュニケーションが取れなかったり、
「なぜこれに気づけないのか?」と皆さんが憤りを感じてしまっているのであれば、
それは、環世界の違いによるものかもしれません。
では、どうすれば環世界を広げることができるのか?
ユクスキュルは、次の様に指摘しています。
以下、書籍『生物から見た世界』(ユクスキュル/クリサート著)より引用・加筆修正
ある動物が実行できる行為が多いほど、
その動物は環世界で多数の対象物を識別できるといってよいだろう。
ある動物の行為が増すとともに、その環世界に存在する対象物の数も増える。
その数は体験を積み重ねることができる動物では、
各個体が生きていく過程で増加していく。
それぞれの新しい体験は、新たな印象に対する新たな態度を引き起すからだ。
その際、新しい知覚像がつくられるのである。
つまり、環世界を広げるには、体験する量を増やし、できるようになることが先決です。
知覚し、理解するからできるようになるのではなく、
体験し、できるようになったことを、以後知覚できるようになる(環世界が広がる)のです。
このロジックは、所謂スキルの獲得にもかなり共通しているのではないでしょうか。
特に営業・セールスに関しては、
コツを掴んだ(環世界が広がった)から売れるようになるのではなく、
売れるようになったからコツが掴めた(環世界を広げられた)、が正しいと思っています。
そのあたりの詳細は、下記からご確認ください(タイトルか画像をクリック)
全てのモノがそうではないと思いますが、
この順序・手順はしっかりと理解したうえで、活用していきたいですね。
・・・あれ?
そうそう、やってみる、が先でした。
体験すること、経験することを通して、理解を深めていきたいですね。
追記)
因みにドラッカーは、冒頭の問いを
「聞くものがいなければコミュニケーションは成立しない」
というメッセージの比喩として引用し、
受け手に知覚されてこそのコミュニケーションであると指摘をしています。
ビジネスにおけるあらゆる戦略も、相手(顧客)あってのこと。
肝に銘じておきたいですね。。。
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