顧客は“可能性”を購入している-前提の活用-
2005年のM-1グランプリで優勝したブラックマヨネーズ
決勝で披露したネタの1本目が『デートでボーリングに行く』という内容です。
単純にめちゃめちゃ面白いのですが、
ネタの中でボーリングの玉に難癖をつける吉田氏に対して、
小杉氏が自分専用のマイボールを購入するように勧めるシーンがあります。
引続き文句を言う吉田氏に対して、小杉氏は対策を説明していくのですが
「買う方向で話進めんなって!!」と吉田氏にキレられます。。
吉田氏は怒っていましたが、
この“買う方向で話を進める”というのは、
セールスにおいて非常に有効なテクニックのひとつです。
顧客は、課題が解決すると思われる“可能性”を購入しています。
商品・製品・サービスというモノは、その可能性を実現させる為の手段だからです。
つまり、購入したらどうなるか?という未来(=可能性)を
イメージしてもらわなければなりません。
営業は、顧客が“購入することで得られる未来”を
クリアに見える様に支援していくことが仕事です。
ですので、仮に購入(導入)したら、どうなるのか?
という切り口でヒアリングや提案をしていくことは非常に有効なのです。
逆説的に、仮に購入(導入)しなかったら、どうなるのか?
という切り口も、機会損失の可能性をイメージしてもらう上で同様に有効です。
キレられてしまってはいけませんが、
買う方向で話を進めてみる、というのは非常に有効なアプローチです。
関連して “前提”というテクニックも興味深いので紹介します。
言語学において前提 (presupposition) とは、
ある命題が適切に発話されるためにあらかじめ知られていなければならない命題のこと
であるとされています(wikipediaより)。
定義だけ聞くと小難しいので、前提を活用した例を紹介します。
キムタク主演でドラマ化された、
警察学校を舞台にした『教場』に出てくる、あるシーンです。
※以下出典『教場』(1)第七話 牢問①より
警察学校で、取調べの授業が行われます。
警察官役が被疑者役に対して質問します。
「あなたが県庁前の交差点を車で通ったのは、何時頃ですか?」
これが前提のテクニックです。
「あなたは県庁前の交差点を車で通りましたか?」と聞いてしまうと、
簡単に否定されてしまいます。
県庁前の交差点を車で通ったことを、
意図的に前提(既成事実)として質問をしています。
前提を使った質問は、
相手に認めさせたいことを直接尋ねるのではなく、
それ(相手に認めさせたいこと)を前提として展開する、
という形をとります。
そうすることで、
先の「〇〇する方向で話を進める」がやりやすくなります。
前提は、マーケティングでも使えます(使われています)。
『なぜ理系出身の営業パーソンは、提案スキルが高いのか?』
という文章があったとします。
因みに僕が適当に作りましたので、事実無根です。
※その様な因果関係が本当にあるかもしれませんが・・・
しかし別に不自然な文章ではなく、むしろ「そうなのかな?」となりませんか?
これも前提を利用しています。
「なぜ○○は、●●なのか?」
という文章は、○○=●●であることを前提としています。
そうすると、脳が勝手に○○=●●である理由を探してしまい、
その後の論理展開の説得力が増します。
近しい文章は、キャッチコピーや書籍タイトルなどでも
頻繁に見かけることができると思います。
これは、前提を使っているな・・・と是非気にしてみて下さい。
日々の商談や、提案・プレゼンの切口に活用できるのではないかと思います。
皆さんの商品・製品・サービスの価値を適切に顧客に訴求する為にも、
“前提”をウマく利用しつつ、“買う方向で話を進めて”みて下さい。
顧客は“訪れるであろう未来・可能性”を購入しています。
それを正しく、クリアに認識できるように支援することが営業の仕事です。
追記)
前提を活用するとは、その前提を“疑う”ことも含みます。
※出典『チ。―地球の運動について― 』第45話 より
この疑い方については、また別途考察したいと思いますが、
持つべき視点の一例として、下記も参考にして下さい。