Information
Empowerment Consulting Co.,Ltd

Blog 営業支援BLOG

教わる<教えるの法則-認知的不協和の利用-

あれは高校三年生、受験生の頃です。

 

 

放課後、友人のO君と日本史の勉強をしていました。

 

 

ふと、なんか教科書読むの面倒くさいなぁと思ってしまった僕は、

 

O君にある提案をします。

 

 

「よし、今から俺に日本史の授業をしてくれ。

 

教えることで、O君の理解も深まるはずや。さぁ!」

 

 

 

半ば強引に、黒板の前に立たせて、授業をしてもらいました。

 

 

O君(教える側)の為になる、と全くの無根拠での提案でしたが、

 

あながち間違っていなかったようです。

 

 

 

人は、教わるよりも教える時に多くを学ぶのです。

 

 

 

下記、ケイティ・ミルクマン著『自分を変える方法』に記載のある実験です。

 

2018年に行われたある実験について、同書より抜粋一部加筆修正です。

 

 


 

学業目標を達成しようとする生徒を助けるための大規模な実験を行った。

 

新学期開始直後の実験当日、

 

フロリダ州全域の7つの高校の生徒約2000人が、教師と一緒にコンピュータ室に入った。

 

一部の生徒は、パソコンで短いアンケートに答えた。

 

だが残りの生徒は、一風変わったことを行った。

 

彼らは、生徒なら誰でもそうだが、これまで学校で助言を受け続けて来た。

 

「授業に集中しなさい」

 

「テストの前に問題を解く練習をしなさい」

 

「宿題は期限までに提出しなさい」、等々。

 

だが今日は違う。

 

彼らは、助言を与えるように求められたのだ。

 

これらの生徒は、10分間のオンラインアンケートで下級生への助言を求められた。

 

例えば、

 

「先延ばしを防ぐためにどんなことをしていますか?」

 

「集中して勉強したいときはどこへ行きますか?」

 

「成績を上げたい人に一般的なアドバイスはありますか?」

 

といった質問をされた。

 

アンケートに答え終わると、生徒はそのままいつものように残りの学期を過ごした。

 

実験の対象機関側終わると、

 

私達は生徒自身がもっとも重要だと答えた科目の成績と、数学の成績を収集した。

 

そして驚くなかれ、私達の戦略はうまくいった。

 

たった数分間の助言を行った生徒は

 

残りの生徒に比べてこれらの科目の成績が上がったのだ。

 

誤解が無いように言っておくと、誰かに助言を与えることには、

 

平凡な生徒を学年総代に押し上げるほどの効果はない。

 

だがそれでも、あらゆる状況に置かれた高校生の成績を上げる効果があった。

 

どんな生徒も仲間に助言を与えることで、成績がわずかに上がったのだ。

 

因みに、生徒は助言を与えることを喜んでいるようでもあった。

 

実験に協力してくれた高校生たちは、

 

これまで意見を求められたことは無いから、とても楽しかったと教師に伝えた。

 

「今度いつできますか?」と期待を込めて催促した生徒もいた。

 


 

 

同書では、アドバイスを求められた生徒たちは、

 

自分はもっとできると期待されていると感じ、

 

自信が持てるようになったことが大きな要因の一つであると分析しています。

 

 

では、肝心のアドバイスの内容自体はどうなのでしょうか?

 

 

因みに、何でもかんでも教える側に回ればいい、というわけではありません。

 

 

流石に、門外漢のことはアドバイスも思いつかないでしょう。

 

 

実験にある通り、自分が深く関わっている分野で、

 

ある意味自分も悩んでいる場合に効果があると言えそうです。

 

 


 

また、実験と並行して行ったインタビューからわかったのだが、

 

人々は自分自身が苦戦していた目標の達成に役立つアドバイスを求められると、

 

じっくり考えることもなく、ぱっと答えることができた。

 

業績不振の営業担当者や成績不振の生徒など、

 

苦戦している人々でさえ、多くの良いアドバイスを持っていた。

 

私達が他人に与える助言は、自分の経験がベースになっている。

 

つまり、誰かに教えを乞われると、

 

私達は“自分に役立つこと”を教える傾向にあるのだ。

 

そしてその助言を与えたあと、自分自身でもそれを実行しなければ偽善に思える。

 

これは、心理学で「話したことを信じる効果」と呼ばれる現象だ。

 

誰かに何かを言うと、

 

認知的不協和を避ける為に、それを自分で信じてしまうことが多い。

 


 

 

認知的不協和とは、

 

自分の思考や行動に矛盾がある時に生じる不快感やストレスのことを言います。

 

 

つまり、自分の発言と実際の行動が一致していない場合には、

 

ストレスを感じ、それを解消しようと行動を変えたり認知を歪めることがあるのです。

 

 

アドバイスをしたからには、

 

自分自身もそのアドバイスに反するような行動は取りにくくなる、ということです。

 

 

 

これは結構使えそうですよね。

 

 

 

活用例として、僕も研修などで実際に取り入れています、

 

「教わる<教えるの法則」を活用した取り組みを2つご紹介します。

 

 

 


(1)普段は教える立場でない人にも機会をつくる


 

例えば、営業チームでプレゼンやロープレを実施したとします。

 

 

その際、参加者全員に、

 

他メンバーの良かった点(Good)と改善点(more)を発表してもらいます。

 

 

普段はフィードバックを貰う側の方達にも、他者へのアドバイスをしてもらいます。

 

 

場合によっては、上司や先輩に改善点(more)を指摘することになります。

 

 

気が引けるかもしれませんが、非常に効果的です。

 

 

自分もなかなかできていないことだからこそ、指摘も的を射ています。

 

 

グループワークなどをした際には、

 

普段は教わる側からアドバイスをする機会を創ってみて下さい。

 

 

 


(2)自分が管理職ならどう指導する?を考える(考えてもらう)


 

例えば、営業会議のような場に参加しているとします。

 

 

売上目標に届いていない、KPI(やるべきこと)が未達、期限が遅延している、等々。

 

 

当然ながら、いつくかの問題が発生しています。

 

 

ここで、本人に問いかけます。

 

 

「もし自分が自分のマネージャーなら、どうアドバイスしますか?」

 

 

自分で自分ができていない理由はわかっているはずです。

 

 

それを踏まえた何かしらの改善プランは、頭の中にあるのではないでしょうか?

 

 

それをアウトプットすることによって、宣言したことになり、

 

先の認知的不協和の様に、実行に移せる確率も上がります。

 

 

 

自分が管理職ならどう指導するか?

 

 

 

ご担当の方は、考えてみて下さい。

 

 

管理職の方は、考えさせてみて下さい。

 

 

これも一種のセルフマネジメントです。

 


 

 

この教えるスキルは、

 

営業に関わらず、ビジネスパーソンの“成長”に不可欠なスキルです。

 

 

教えるとは、言うなれば“コツの言語化”です。

 

 

コツの掴み方は、下記を参考にしてください。

 

▼コツを掴む-量から質と鏡をみることと-

 

併せて、教えるという機会を如何に獲得していくか?がまずもって重要です。

 

下記も是非ご参考下さい。

 

▼営業パーソンが成長できる環境の創り方

 

 

追記)

 

O君に日本史の授業をさせた(してもらった)結果です。

 

 

途中から、生徒役の僕が変な合いの手を入れる、という遊びになってしまい、

 

学習としての成果は実らず・・・

 

 

何事も真面目にやらないとダメです。

 

 

ムダだったと考えるか、

 

このような気づきを生む有意義な出来事だった、と考えるか?を

 

意味の原理、といいます。気になる方はこちらも。

 

▼過去の変え方-意味の原理―

Pocket